ZOOM UP INTERVIEW

今を生きるすべての人に寄り添う感動作
“永遠の脇役”だと思って生きる女子高生を熱演

原菜乃華

Photo:平野司

映画『ないものねだりの君に光の花束を』で、ACEesの作間龍斗とW主演を務める原菜乃華。彼女が演じるのは、自分に自信を持てず“永遠の脇役”だと思って生きてきた女子高生の影子。一方、作間は人気急上昇中のアイドルでありながら、心に深い傷を抱える同級生・真昼を演じた。2人が少しずつ築いていくのは、恋愛とも友情とも簡単には言い表せない特別な関係だ。そんな影子について「学生時代の自分にすごく似ている」と語る原に、演じるうえで大切にしたこと、そして作品を通じて感じたことなど聞いた。

恋愛でも友情でもない、2人の絶妙な距離感を大切に

 原作を読ませていただいて、とにかくストーリーが面白かったので、出演が決まったときはすごく嬉しかったです。影子に共感できる部分が多い一方で、真昼に共感できる部分も多くてどちらの気持ちもすごくよくわかりました。

 そのあとに脚本を読んだのですが、原作とは少しテイストが変わっていて。脚本(ホン)読みのときに、安藤尋監督に「恋愛要素はどうしますか? なくていいんですかね」と聞いたら、「恋愛としては描いていないです」としっかり言っていただいたので、より素敵な物語だなと。影子と真昼くんの関係性はいままでにあまり見たことのないものだったので、そこがすごく魅力的なんです。

 影子と真昼は芯が一本通っていて、お互いに自立しているからこそ本当に絶妙なバランスの関係性を築けています。きっと同じものを見て、同じようなことを感じ取れる2人だと思うし、人との距離の詰め方や、選ぶ言葉のセンスも似ている。だから、彼らの関係性を安易な言葉にまとめたくないというか、まとめるのはもったいなくて。2人の距離が他者から見たらわからないくらい繊細な速度でゆっくり縮んでいくので、「この時点ではどれくらいだろう?」と、その進み具合を都度考えながら演じていました。

 すごく好きなのは、真昼くんが影子に「好きな本って何?」と聞くシーン。それに対して影子が「それってすごく自分を見透かされてる気がするから言えないんだよね、自意識過剰だけど」と言うと、真昼くんが「わかる」って答えるんです。それだけで2人は同じ哲学というか、同じ感性を持ち合わせているんだろうなということが伝わってきて、「あぁ、この物語が好きだな」って(笑)。

影子は学生時代の自分に似ている。自己肯定感の低さにも共感

 影子は学生時代の自分にすごく似ています。ネガティブで、「自分なんて……」と思ってしまいがちなところや、自己肯定感が低いところとか。他人との間に一線を引いたり、壁を作ったりしてしまいがちなところも。

 影子は「ここには踏み込んでほしくない」というラインが自分自身にしっかりあるからこそ、相手のラインも飛び越さずに絶妙な距離感で接する。それが彼女なりの優しさなのかなと勝手に思っていて、そういう部分はすごく共感できます。

 そして、何か思ったことを口に出すときに、すごく考える子なんです。「どう思われるだろう」とか、「正しいかな、この言葉遣い」とか、常に頭の中で話す内容を添削してから喋る。そういうところも似ている気がしますね。

人の気持ちはわからない。それでも、わかりたいと思うことが大切

 影子の真昼くんへの接し方や声のかけ方を見ていると、「すごく愛のある家庭で育ったんだな」とひしひしと感じます。お父さんやお母さんがしっかり寄り添ってくれていたのが透けて見えるというか。十分に愛を与えてもらっていたからこそ、自分もその愛をちゃんと人に渡すことができる人なんだろうなと。

 実は影子から真昼くんに対して、「芸能界を知らないからこそ言える」と感じる台詞があるんです。少し踏み込んだ発言だなと思う瞬間もあったんですけど、真昼くんは、一生懸命な影子の言葉にちゃんと耳を傾けてくれて。突き放すこともできたのにそうはしない。すごく優しくて誠実な人なんですよね。

 人の心の痛みって、他人には絶対にわからないと思うんです。だから「わからないけど、でもわかりたい」と努力することが、誰かを大切に思うことの本質なのかもしれません。この作品を通して、そのことをすごく感じましたし、きっとお互いにそれができている2人だったんだなと思います。

 影子は彼女自信の台詞にもある通り、特別な人間ではないのかもしれません。でも彼女なりに人の痛みを想像して、わからないなりにも寄り添おうとする。その姿勢がちゃんと誰かの心を救えるというのは、この作品が持つすごく大切なメッセージです。自分と似た性質を持っているキャラクターが、人との出会いをきっかけにここまで愛を与える側になれることが、私自身の背中を押してくれました。

“このままでも十分なんだ”と思えるようになった

 私自身、めちゃくちゃ“ないものねだり”だと思います。自分が持っていないものを持っている人を見ると、やっぱり羨ましい(笑)。学生時代はそれがすごくコンプレックスだったんですけど、今ではそれでもいいかもと思えるようになったから不思議です。

 長所と短所って、本当に表裏一体。良いところがあるからこそ、悪いところもあるということでしかなくて。自分の良いところも悪いところの裏返しなのかなと思うと、まぁ、こんなもんかなと(笑)。

 そんなふうに思えるようになったのは、仕事を通じて出会った方々からたくさんの言葉をもらえたから。このままの自分を肯定してくださる方がいるんだと実感できたことが、自信につながっているのかもしれないですね。

映画館を出たあと、“自分ごと”として考えられる作品

 私は映画館を出たあとの帰り道で、作品についていろいろと“自分ごと”として考えられる映画って、すごく素敵だなと感じるのですが、この作品はまさにそういう物語。一見、恋愛映画っぽく見えるんですけど、実はもっと深い作品です。

 いまってどうしてもSNSで自分と他人を比較することが日常になっている時代。私も学生時代はそうだったので、リアルタイムでそういう感情を抱きがちな、影子と同じ世代の方たちにまず観ていただきたいです。それと同時に、影子のお母さんやお父さんに共感する方もたくさんいるはず。温かくて大切なメッセージがたくさん詰まった家族の物語でもあるので、いろいろな世代の方に届いてほしいですね。

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PROFILE

原菜乃華(Nanoka Hara)

2003年8月26日生まれ。2009年に子役としてデビュー。アニメーション映画『すずめの戸締まり』で主人公・岩戸鈴芽の声を務め注目を集める。菅田将暉主演作『ミステリと言う勿れ』で第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の主な出演作に『【推しの子】-The Final Act-』、NHK連続テレビ小説『あんぱん』などがあるほか、2026年は本作や声の出演を含む3本の出演映画が公開される。

映画『ないものねだりの君に光の花束を』

11月20日(金)全国公開

個性がなく「普通」である自分に嫌気が差している高校生・影子(えいこ)。同じクラスの真昼(まひる)は人気急上昇のアイドルで、勉強も性格も完璧の誰もが羨む「特別」な存在。生きる世界の違う真昼に引け目を感じ距離をとりたい影子だったが、一緒に図書委員を務めることになったことをきっかけに、彼が誰にも打ち明けてこなかった壮絶な過去を知ることになる――。それは、「恋」よりも、もっとずっと尊い2人の物語。

監督:安藤尋

【出】原菜乃華、作間龍斗(ACEes)、向井怜衣、吉沢悠、戸田菜穂、眞島秀和(ほか)

映画『ないものねだりの君に光の花束を』の予告編をチェック!

Photo:平野司、Text:足立美由紀、Hair&Make:馬場麻子、Stylist:山田安莉沙

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