ZOOM UP INTERVIEW
“揺らぎ”が薫を演じるにあたって
重要なポイントでした
奈緒
Photo:平野司
江戸川乱歩賞受賞作家・佐野広実の同名小説を吉岡里帆&奈緒のダブル主演で映画化した『シャドウワーク』が9月25日(金)に公開。本作は配偶者や親から暴力を受ける女性たちにスポットを当てたサバイブサスペンスとなっている。自らも夫・北川晋一(北村匠海)から追い詰められながら、不可解な事件を追う刑事・薫を演じた奈緒にインタビューを実施。作品への思いや役作りについて、また撮影秘話も語ってもらった。
「今まで演じたことがないチャレンジングな役どころです」
𠮷野竜平監督とは『君は永遠にそいつらより若い』でご一緒して、今回も同じスタッフさんが多く、またみなさんと新しい作品を作れることが楽しみでした。
お話をいただいてから、まず原作を読ませていただき、お客さんに問いかけるような作品になるのではと感じました。薫という人物が私にとっては今まで演じたことのないような役でして。「おうち」にお住まいの皆さんと、警察という組織の中で1人で闘っている薫の2つの軸が交差するというところも含めて、すごくスリルのある物語だと思います。
薫という役は「孤独に闘う」という意味において、今までとも少し違うチャレンジングな役どころです。今までは傷ついていても誰かと一緒に寄り添って生きていったり、側に誰かがいたりということが多かったんです。孤独を持っている役でも誰かと出会うところからスタートするとか。でも、薫の場合は、孤独に1人で闘っているところが多く描かれるので、そういった意味で新鮮な感覚がありました。ただ、劇中では孤独なパートが多かったのですが、実際の撮影現場では、仲間が多く、監督も含めて信頼する皆さんと一緒だったので、孤独を感じることはなかったです。

「警察官という役柄の型を崩すことに重きを置いていました」
薫はひと言で言うと「正義感を壊されてしまった人」だと捉えています。それも不条理に。薫は警察官としてひとつの正義感を持っていますが、その正義というものを傷つけられている状態なので、もともと薫がどんな人物だったんだろうと想像して、それをバックボーンとして落とし込みながら演じました。いわゆる男性社会の中で闘わなければならない環境で、対等に見られるために、いろんなものをそぎ落としてきたんだろうなと思います。だからこそ、おそらく彼女が持っていたであろう柔らかさも、少しずつそぎ落とされていくような感覚がありました。
演出部がまず非常に詳細な警察という背景の資料を作ってくださったんです。どんな工程を経て警察官になるのかから始まり、自分でリサーチする必要がないほど詳細で、それを大きなヒントとさせていただきながら臨むことができました。最初の方で港で発見されたご遺体を確認するシーンの撮影があったのですが、実際に警察官の方が監修として来てくださっていて、私に対して「こういう警察官いますよ」って言ってくださったんです。警察官らしい佇まいがあるということだったので、ホっとしました。
逆に、“警察官らしさ”を意識するよりも、警察官という役柄の型を崩すことに重きを置いていました。彼女の中には個人的に大きな影があって、だからこそ警察官としての居場所にしがみついているような感覚があったんです。薫の部屋ひとつとっても、散らかっていて、まとまらない気持ちを抱えていることの表れだと思うので、そういった個人の心情を大切にしました。
監督からは「薫として揺れていてほしい」というお話があったので、気持ちを固定せずにさまざまな気持ちが胸に去来することを恐れずに現場に存在しているということを意識していました。この“揺らぎ”ということは今回、薫を演じるにあたって重要なポイントでした。

「吉岡さんは大きな魅力を持っていらっしゃる先輩だと思います」
吉岡さんとは広告で一度ご一緒したことがあって、そのときから映画やドラマでご一緒できたらいいなと思っていたので、今回念願が叶って嬉しかったです。いろんなことに対して深く向き合っていらっしゃる方だと感じて、吉岡さんの持っている深さをもっと知りたくなるんです。でも、そこには簡単には触れられなくて。その距離感も含めて、とても惹きつけられる大きな魅力を持っていらっしゃる先輩だと思います。
北村さんと原(嘉孝)さんも初めてお芝居をご一緒させていただきまして、お二人とも初めてとは思えないほど安心感がありました。事前に打ち合わせの場を設けなかったのですが、思い切りのびのびと演じることができました。休憩の時間は他愛もない穏やかなお話をさせていただけて、とても和やかで豊な現場でした。
傷ついた女性たちが身を置くシェルターとなっている「おうち」のシーンの撮影では、スタッフの方が「今日は◯◯茶だよ」とか、「今日のおやつは◯◯だよ」と出してくださり、まるで親戚の家に帰ってきたような和気あいあいとした空気が流れてました(笑)。私はメイクルームでおしゃべりするのも好きなんですが、「おうち」のシーンではすぐにリビングに行ってみんなと話すのを楽しみにしていたんです。「おうち」を貸してくださったご家族も温かく撮影を見守って、いつも「頑張ってね」って声をかけてくださいました。あの「おうち」という場所に助けられながら良い雰囲気で撮影をすることができたなと思います。

「自分を知るということが重要だと改めて気付かされました」
自分自身の軸を持つと言うことの重要さと改めて向き合う作品だと思います。この作品の中で登場人物がいろんな選択をしますが、そのひとつひとつの選択が間違っているのか正しいのかと言うことは、見ている方ひとりひとりが持っている軸によって変わるんじゃないでしょうか。自分自信と向き合って、どういう選択をするのかを考えることで、自分を知るということが重要だと改めて気付かされました。劇中でしのぶ(酒井若菜)さんの「間違いだとしても、正しく間違いたい」というセリフがあるんですが、とても印象に残っています。

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PROFILE
奈緒(NAO)
1995年2月10日生まれ、福岡県出身。近作に、映画『傲慢と善良』『死ねばいいのに』、ドラマ『東京サラダボウル』『塀の中の美容室』、舞台『大地の子』など。公開待機作に、主演映画『あをの情』(2027年公開)がある。初のフォトエッセイ『いつか』が好評発売中。
映画『シャドウワーク』
9月25日(金)全国公開
DV夫から逃れた紀子(吉岡里帆)は、被害者シェルター〈おうち〉に匿われ、そこでDV加害者の「交換殺人」が行われていると知り参加を決意する。一方、不審死事件を追う刑事の薫も〈おうち〉に辿り着く。自身もDV被害者である薫は潜入を図るが、背後では彼女の夫も暗躍を始めていた。それぞれの思惑と疑惑が、恐るべき展開を招こうとしていた──。
監督・脚本:𠮷野竜平
【出】吉岡里帆、奈緒、美保純、酒井若菜、ファーストサマーウイカ、佐月絵美、北村匠海、原嘉孝(timelesz)/風吹ジュン(ほか)
映画『シャドウワーク』の予告編をチェック!
Photo:平野司、Text:入江奈々、Hair&Make:竹下あゆみ、Stylist:岡本純子