ZOOM UP INTERVIEW

切なくも温かい同名原作を映画化
余命一年、死を覚悟した女性を演じる

広瀬アリス

Photo:平野司

どう生きるかをひたむきに追いかけた、切なくも温かい感動の人生賛歌『沖晴くんの涙を殺して』。本作で死神に「喜び」以外の感情を奪われた高校生・沖晴に出会う、余命1年の音楽教師・京香を広瀬アリスが演じている。このたび、広瀬にインタビューを実施し、作品への思いや役作りの苦労、撮影秘話を語ってもらった。

まず初めに台本を読んで

インパクトのあるタイトルで、どんな作品なんだろうと興味深く台本を読ませていただきました。死神という言葉が出てきたり、沖晴くんは喜びという感情しか無いという設定であったりして、ファンタジー要素も少しある作品ですけれど、人間の綺麗ごとだけではない、泥臭い部分が描かれていて自分にとってチャレンジングな役どころだと思いました。

京香として作品に触れたところ、感情がとても揺れる瞬間もありましたけど、それも人間らしく感じました。例えば、余命を知ってもすんなりと受け止めて「大丈夫、後は楽しく穏やかに過ごすだけ」って言えればとてもかっこいいとは思います。でも、ネガティブな感情も、人が人であることにおいてすごく大切なものだと思っているんです。ネガティブな感情があるからこそ、人に優しくなれたり、寄り添うことができたり、強く生きることができたりして、自分を成長させてくれる感情だと思うんです。そのときはもちろん辛くて苦しいけれど、経験としてその人を形作るものだから。そこがしっかりと描かれている作品だと感じました。

役作りと撮影中に苦労したこと

役作りとしてはまず減量しました。あと、ピアノの練習もがんばりました。実際にあのイントロ部分を自分で弾くものですから。これまで楽器の演奏と縁がなかったので人生で初めての経験で、撮影の3か月前程から練習を初めて、クランクインしてからも空き時間やお休みの日など時間を見つけて弾いていました。撮影では1回でOKをもらえて嬉しかったですけど、すごく緊張しました。

沖晴くん役の木戸(大聖)くんと海に落ちる場面も苦労したシーンです。水中は基本的に何がどうなっているかわからないですし、撮影は本当に大変でした。人工呼吸するシーンはクランクイン初日でして、6月下旬頃で暑いと思っていたんですが、全身びっしょり濡れてアスファルトに寝そべったら体温を持っていかれてしまって、とっても寒かったです。逆に屋上のシーンなどはめちゃくちゃ暑かったです。学校の屋上で沖晴くんがお弁当を食べる場面があるんですけれど、普通ににこにこしながら食べたあと、カットがかかったとたんに木戸くんが「あっつ!」って言って離れてました。もう地面に肌がつけられないくらいに熱くて、気温も暑くて。暑かったり寒かったり、撮影中は気温との戦いでした(笑)。

京香と沖晴の関係性

役作りする上で沖晴くんと京香の距離感はどうなんだろうと考えました。友だちではないし、もちろん恋人ではないし、家族という距離感とも違う。京香にとって沖晴くんは“同士”という言葉が似合う関係性で、死というものに囚われている2人だから惹きつけ合うものがあったんじゃないかと思います。京香は喜びしかない沖晴くんがいろんな感情を取り戻すまでを助けたい、救いたいと思っているけれど、実は京香も沖晴くんに救われる部分がたくさんあって、お互い補い合う存在なんだと感じました。

「生きる」という作品の持つテーマについて

「死」ってとても大きなできごとだと思っていたんです。でも、京香って意外と「死」を目の前にしたときに「じゃあ、どう生きようか」って前向きに捉えるんです。その考え方って自分になかったなって。この作品は絶望するわけじゃなく、「死」に対して重く描いているわけじゃないんです。意外とリアルってこんな感じかなと思ったりしました。「どう生きるか」って本当に重要で、何気ないこの瞬間や友だちと笑って過ごしている時間って本当に幸せなことなんだなって実感しました。役を通じて「死」と向き合ったことで、反対に「生きる」ということも深く考えさせられたんです。これといって趣味があったわけじゃなかったのに行動的になったり、今のうちにやれることをやっておきたいと、思い立って海外に1人で出かけたり。ここじゃない他の世界をもっと見てみたいって思ったんです。そして、海外に行くと逆にやっぱり日本っていいなぁって日本の良さがよく見えてきたり。ずっと同じ所に居ると気付けない幸せに気づくことができて、当たり前が当たり前じゃないと思えるようにもなりました。この作品に出演したことでずいぶんと影響を受けたと思います。

もしも京香の立場だったら?

もしも私が京香の立場だったら、最初、自分はあがいてしまうだろうと思いました。でも、京香を演じていくうちにショックを受けて悲しむよりは残された時間を大切にしたいと思うようになったんです。何気ない日常をちゃんと幸せだと思えるようになりたいと。京香のように自分が今居る場所を離れてみることもいいなって思って、それで海外に行ってみたんです。これからも小さな幸せ探しの旅はまた行きたいです。

仕事の軸としていることは?

仕事の軸は、とにかく楽しいことが一番。楽しいと言ってもゲラゲラ笑ってふざけ合うことばかりじゃなくて楽しいにもいろんな種類があります。やっている最中はきつかったりしんどいなっていうときもありますけど、みんなでやりきったね、楽しかったねって達成感を感じられる瞬間が好きです。それがモチベーションになって、また次も頑張れて、いいサイクルにつながっていくんだと思います。楽なお仕事ってないと思うので、やるからには楽しく取り組みたいです。

これから作品を見る方にメッセージを

京香と沖晴くんが感情を取り戻す不思議な日常を描くなかで、日常におけるさまざまな感情が描かれています。ネガティブな感情もポジティブな感情もすべて大切な瞬間なので決してマイナス思考にはとらわれないで欲しいです。死と向き合うことで生き方をまっすぐに見つめられて考えさせられる作品になっていると思います。

PROFILE

広瀬アリス(Alice Hirose)

1994年12月11日生まれ。2009年「Seventeen」の専属モデルに。2010年『明日の光をつかめ』でヒロインに抜擢されて注目を集める。他の主な出演作に『わろてんか』、大河ドラマ『どうする家康』。2027年3月公開予定『ENJU エンジュ』でアクション映画初主演に挑む。

映画『沖晴くんの涙を殺して』

10月2日(金)全国公開 ※9月18日(金)広島先行公開

末期の乳がんを患い余命1年を宣告され、治療しないことを選択し故郷に戻ってきた音楽教師の踊場京香(広瀬アリス)。母校の合唱部の指導をすることになり、そこでクラスメイトから“死神”と呼ばれている不思議な高校生・沖晴(木戸大聖)と出会う。

監督:矢崎仁司 原作:額賀澪『沖晴くんの涙を殺して』(双葉文庫)

【出】広瀬アリス、木戸大聖、満島真之介、北乃きい、戸田菜穂、根岸季衣(ほか)

映画『沖晴くんの涙を殺して』の予告編をチェック!

Photo:平野司、Text:入江奈々、Stylist:椎名倉平、Hair&Make:会川敦子、衣裳:リブニット/Little Suzie(リトルスージー)、デニム/Japan Blue Jeans、ネックレス・リング・バングル/e.m.、ピアス/MARLENAPhoto

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