ZOOM UP INTERVIEW

「鬼平犯科帳」の世界をよく知る名優が
密偵・相模の彦十役で松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」シリーズに出演!

尾美としのり

Photo:平野司

松本幸四郎主演 池波正太郎原作の「鬼平犯科帳」シリーズ。その第8弾となる市川染五郎主演「本所の銕」がこの10月に時代劇専門チャンネルで独占初放送される。この最新作「本所の銕」より新たに密偵・相模の彦十役を演じる尾美としのりに、シリーズ出演について話を伺った。

密偵・相模の彦十役としてシリーズ出演の裏側

 新しい「鬼平犯科帳」観ている皆さん、昔からずっと観て下さっていらっしゃる「鬼平」ファンの皆さんに、余計な情報を与えてしまうのは良くないんじゃないかなと思って、最初は「無理無理」とお断りするつもりでした。僕はずっと木村忠吾でしたから。たとえ1話限りのゲスト出演だったとしても、出るべきではないと。

 ただ、原作者の池波正太郎先生の事務所の方、幸四郎さん、山下智彦監督やスタッフの皆さんも全員OKだと。監督には、木村忠吾役で出演していた、中村吉右衛門さん主演の「鬼平犯科帳」で助監督だった頃からずっとお世話になっていましたから、皆さんに背中を押していただくような感じで観念しました(笑)。

(シリーズ第8弾「本所の銕」は、今冬放送予定の第9弾「密告」の前日譚にあたる内容で、原作『密告』に着想を得た書き下ろしの物語。“鬼平”こと長谷川平蔵の若き日・銕三郎役で市川染五郎が主演し、尾美としのり演じる相模の彦十との初めての出会いという重要な場面も登場する)

 僕のなかでは彦十と言えば吉右衛門さん主演シリーズでご一緒させていただいていた三代目江戸家猫八師匠のイメージなんです。だから僕が演じると、やっぱりその雰囲気に寄ってしまうと思ったので、「それでもいいですか?」ということは事前にお伝えしました。江戸弁というか、あの少し砕けた喋り方を僕もできたらと思いながら演じましたね。「この地毛の白髪を生かしてみたら面白いんじゃないか」とか、「彦十の風貌は少しだらしなくしてみよう」とか、監督や床山さん(結髪師…まげやかつらの担当スタッフ)と相談して、このような形になりました。

旧知のスタッフの存在に助けられた撮影現場

(長きにわたって現場を共にした中村吉右衛門の平蔵と、今シリーズでの松本幸四郎と市川染五郎父子の平蔵、その3人の姿を間近で見ることができた共演者として尾美は、今回共演した幸四郎、染五郎の印象をこのように語ってくれた)

 幸四郎さんのお芝居は隣で見ていて、ちょっとした呼吸や間(ま)に本当にドキッとさせられました。瞬きひとつとっても本当に感動するくらいです。それは吉右衛門さんにも感じた部分なんですよ。やっぱり同じ血が流れているからなのか、歌舞伎役者の方が持つ独特のものなのか……。染五郎さんも魅力的な方で、彦十のセリフにもありましたが「シビれるね!」と言いたくなるカッコよさがありました。これからどう進化されていくのか本当に楽しみです。

 撮影現場では、山下監督はもちろん、記録の竹内美年子(みねこ)さん、キャメラマンの江原祥二さん、若い頃からご一緒していたスタッフの方々が続けていらしたことがすごく心強かったです。久しぶりに京都の撮影所のセットに立った時に「おかえりなさい」と言って迎えてくださったのもうれしかったですね。やっぱり気恥ずかしさもありましたけど、そういう心遣いをしていただいたおかげですごく安心できました。もちろんそこに甘えないで、もっとキチっとしなきゃと思って相当緊張もしていましたが。完成した作品を拝見しても、他の皆さんのお芝居は細かいところまで記憶に残っているんですけど、彦十が出てくるところだけ全然覚えていないんです。自分のお芝居に関しては、監督がOKを出してくれたということ以外、手応えも何もない。そのくらい緊張していました。

 昔、「鬼平」の撮影の時にいつも行っていた喫茶店があって、久しぶりにマスターと会って、「最近どうですか?」なんて世間話をしながら今の撮影所の情報を事前に入れたりもしましたし、所内を歩いてセットやステージを眺めながら、いい気分に浸っていました。いろいろと思うところが胸に込み上げてきつつ、おっといけない、ちゃんと自分のセリフを覚えなくちゃ…と(笑)。京都の撮影所はいつまでも変わらない、刺激的な現場です。

『鬼平犯科帳 本所の銕』©日本映画放送

▲銕三郎との出会いのシーンが本作で描かれる

当たり前のことを当たり前にやることの大切さ

(30年近い期間にわたって演じた木村忠吾役から、相模の彦十役へ。改めて「鬼平犯科帳」という作品について訊いてみた)

 僕にとって「鬼平犯科帳」は自分を育ててくれた、太い木の幹のような作品だと思っています。もちろん他のどの作品も勉強になっているとは思いますが、やっぱり「鬼平」は(演じていた期間が)長かったですからね。今の自分があるのは「鬼平」のおかげですよ。それに、まだ20代だった当時は時代劇の経験がほとんどなくて、かつらの付け方や衣装の着方、身のこなし…大変でした。セリフさえ覚えていれば大丈夫だろうと思っていたら、スタッフの人に「兄ちゃん! 今の歩き方はなんや!」と怒られて、慣れない現場に最初の頃はオロオロしていました。でも、それもやさしさだったんですよね。本当に現場で鍛えられました。難しいなぁと思いながらも続けていくうちに、今はいろんなことを気負わず、自然にできるようになりました。大変だったこともたくさんありますが、無駄なことってないなと思いますね。面白いこと、変わったことをやろうというのではなく、当たり前のことを当たり前にやることの大切さ。それがすごく勉強になりました。

(今冬放送予定の9作目「密告」のなかではなんと、木村忠吾役である浅利陽介との共演シーンも。新旧の「うさ忠」が揃ったこの場面のセリフには、ファンへのちょっとしたサービスもあるとのこと)

 監督に「このセリフはぜひ言ってください!」とお願いされました。それでファンの方々が喜んでくださればと思い、やらせていただきましたが、どうでしょうね(笑)。新しい密偵のおまさ役の中村ゆりさん、小房の粂八役の和田聰宏さんとは「五鉄」(平蔵が密偵たちと情報交換をする際によく使われる軍鶏鍋屋)で顔を合わせることが多くなりました。幸四郎さんの新しい「鬼平」ではみなさんのほうが先輩ですので、そこに「ちょっとお邪魔します…」という感じで様子を見ています。「鬼平犯科帳」は原作が素晴らしいので台本も面白いし、役者さんや現場の雰囲気も良い。今回、「これで大丈夫だったかな?」と思いつつも、また続けて演じられたらいいなと、まだちょっとドキドキしています。

スペシャルトーク&メイキング番組もチェック!

「鬼平犯科帳 本所の銕」本編放送後には、本編とのギャップにときめくスペシャルトーク番組も放送する。5月26日に開催されたファンイベント、第2回『鬼平犯科帳祭』での特別公開収録の模様をお届け。若手俳優たちが「本所の銕」について語る。
また、本編の放送に先駆けて『メイキング・オブ「鬼平犯科帳 本所の銕」』もオンエア。本作の見どころのひとつでもある銕三郎を演じる市川染五郎の迫力の殺陣シーン、染五郎や横山小平次役・駒木根葵汰のインタビューなど、ファン必見の内容となっている。

『メイキング・オブ・「鬼平犯科帳 本所の銕」』©日本映画放送

PROFILE

尾美としのり

1965年生まれ。子役時代から活動し、『転校生』(1982年)、「あまちゃん」(2013年)など数多くの映画、ドラマに出演。中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳』シリーズには1989年から2016年まで“うさ忠”こと木村忠吾役で出演。10月からNHKドラマ10『会社員』放送、12月25日公開『BYE BYE LOVE 探偵はBARにいる』が控える。

鬼平犯科帳 本所の銕

10月10日(土)後1.00~3.00 【再】=10・18

時代劇専門チャンネル

放送年・キャスト

26年【出】市川染五郎、尾美としのり、中島瑠菜、阿佐辰美、駒木根葵汰、松本幸四郎(ほか)

メイキング・オブ・「鬼平犯科帳 本所の銕」

10月1日(木)後3.45~4.00 【再】=2〜10・15〜17・29

時代劇専門チャンネル

Photo:平野司、Text:真鍋新一

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