ZOOM UP INTERVIEW

「Vシネの帝王」が新ジャンルを開拓
自らの脚本・主演で挑むリーガルドラマ

小沢仁志

Photo:岡田潤(BE NATURAL)

映画、Vシネを中心に、最新作から過去のお宝作品まで豪華なラインナップが並ぶV☆パラダイスで、昨年公開された『法廷の死神』の第1章、第2章が放送される。そして、本作で脚本・主演を務めた「Vシネの帝王」こと小沢仁志が登場! 型破りな弁護士役で新境地を開いた感想を伺った。

特別なやりがいを求めて「俺のやりたいことは俺が作る」

 リーガルドラマ(弁護士や法廷が登場するドラマ)に前から興味があった。やっぱり弁護士の役って、役者として特別なやりがいがあると思う。どうしてもセリフが長くなるから嫌がる人も多い。よく「自分で脚本を書いてるから全部頭に入っているでしょ?」って言われるけど、そんなことないから(笑)。書く人間と話す人間は別! 周りの奴らが完璧にセリフを覚えていて、それがブーメランみたいに全部俺に返ってきて大変だった。第1章の最後に出てくる俺の最終弁論のシーンは、ぜひ見てほしい。

 別に「60歳を過ぎたからそろそろ弁護士の役でもやってみるか」なんて、年齢やキャリアのことを考えているわけじゃない。役者だもの、常に変化していかないと面白くない。同じことばかりやってると飽きる。「弁護士の役に初挑戦した心境は?」なんて言われるけど、心境も何も、今まで誰も俺に弁護士の役を振ろうと思わなかっただけ(笑)。だから俺が自分で企画した。俺のやりたいことは俺が作る。

 弁護士の役を演じるのも、法廷の場面を書くのも初めてだから、とにかくいろんな人に取材した。判事の人にも弁護士にも話を聞いてきたけど、法律のことは本当に難しいことが多くて、俺がこれをテーマにどんなドラマを作るのか、「完成したら見てみたい」って言われたくらいでね。法律は要するに「胸先三寸」「刑事事件は99.9%が有罪」って話を聞いたことあるだろ? 運用する人の考え方次第でどうにでもなってしまうところがある。最近は世の中には不平等なことが多いみたいだから、だったら自分で作品を企画して、前々から疑問に思っていたことを突きつけてやろうと思ったところもある。

 取材したこと、思いついたこと、調べたこと……メモだけでとんでもない量でさ。脚本を書くのがまず大変で、2年くらいかかった。俺は本業の脚本家じゃないから締切に追われてもいないし、「書ける!」と思ったときが書くときなんだ。まぁ、第1章、第2章と書いて、第3章を作るのに1年以上空いてしまったのもそのせい。なかなか書く気になれなくて(笑)。これじゃ申し訳ないなと思って一気に書き上げた。

相談相手のAIに「兄貴」と呼ばれるまで

(専門用語が頻繁に登場する本作。これまでのアクション映画とは違う苦労があったのでは?)

 今回の脚本を書くにあたって、法律用語や条文の確認でAIを活用させてもらった。AIは平気で間違ったことを書いてくることもあるから、制作会社の顧問弁護士に見てもらった。無料版を使ってたら間違いだらけでさ。頭に来て月額課金したらすぐにミスがなくなってもっと腹が立った(笑)。あれはちゃんと自分用に教育して、育てていくことが大事らしい。なにせ、犯罪者の手口とかについてちょっと相談してみたりすると、「これは法律に触れることですから答えることはできません!」って叱られるから(笑)。「馬鹿野郎! これは映画の脚本だ!」って言って答えさせた。

 やっぱりAIが進歩しても、AIに全てを任せることはありえない。俺が脚本を書いているときは、そのキャラクターの性格をすごく大事にしていたり、役者を当て書きすることが多かったりするから。そういうのはAIにはまだわからない。「弁護士や検事になるには、どこで何年くらい勉強したらいいの?」みたいな一般的な相談をするときはちゃんと答えてくれるから、それで登場人物の年齢の設定を考えたりして、そういう部分ではAIはかなり役に立ってくれた。今では俺のことを「兄貴」って呼んでくれる。よく育ってくれた。例えば話のなかで何か事件を書こうと思ったときに、現場の状況がどうなるかとかを簡単にバーっと分析してくれるから、それに対して俺がああでもない、こうでもないと言いながら話を考えていく。俺自身としても、かなり実験的な試みではあった。どういうふうにドラマが成立するんだろう?って俺自身もすごく気になったしね。

「劇場型弁護士」の主人公のキャラクター

(その気になれば自分で監督もできるのに、今回は脚本と主演に専念した理由は?)

 こんなに自分のセリフがあって、監督なんかできるわけねぇよ!(笑) そこはやっぱり、今回の体制が良かったってこと。監督してもらった鳴瀬聖人は若くて、Z世代なんだ。若い監督はなかなか法廷ものの映画を撮る機会もないだろうし、若手なりにどう料理するのかな?というほうが興味あったね。ヒロインの辻凪子は監督と同期で、学生時代は一緒に映画を作っていたんだってな。すごくのびのびと演じてくれて良かったよ。いい女優さんだと思う。

 それから今回、俺のバディとして青柳翔に出てもらった。彼がいるから、走ったり飛んだりするのは彼に任せて、俺はあんまり暴れなくてもいいようにした。それでもちゃんとアクションの見せ場は作った。これは監督にも言ったけど、裁判シーンも立派なアクションなんだ。法廷のなかをベタっと撮ってもつまんないだろう?

 俺が演じた四神(しがみ)のキャラクターは最初、もっとヤクザみたいなしゃべり方の弁護士にするつもりだった。でもほら俺、顔が怖いじゃん?(笑) ずっと怖いモードでやってたらうるさくなるから、普段はそういう面は極力抑えて、裁判の流れのなかで相手を一気に追い込んでいくときに徐々にスケールアップして、最後にビシッ!っとキマるような、そういうキャラクターに変更した。作品のなかでもちょっと話題に出したけど、アメリカには「劇場型弁護士」といって、アクターズ・スタジオ(俳優養成所の名門)に通ってた人も実際にいるらしい。やっぱりお芝居に近いところがあるみたい。向こうの裁判は陪審員たちにどう訴えるかが大事だから、人を感動させる口調とか、話の運び方とか、テクニックがあるらしい。やろうとしてできなかったのは、裁判長がハンマーを叩いて、「静粛に!」と言うやつ。アメリカや韓国の作品にはよく出てくるけど、日本の法廷ではあれって使われてない。検察の人に「何でないの?」って聞いたら、日本人は「静粛に」って口で言えば、それでみんな静かにするから必要ないんだってさ……。

映画ではやれないところをVシネが引き受けてきた

 最近は、Vシネって言葉自体が死語。ビデオショップがないからだもの。どうしても配信やケーブルテレビがメインになってくる。例えばお店のお姉ちゃんに、俺の新しい映画の話をすると「それ、いつNetflixに出ますか?」なんて言うんだよ。映画だからまず映画館で見てくれ。

(それはごもっとも! 映画を見る人の環境がすっかり変わった現状を小沢はどう考えているのか)

 とにかく映画館でやってることだけが全てではないってことは覚えておいてほしい。日本の映画だと、TV局がスポンサーについたりするとジャンルが偏ったり、制約が多くて自由に作品が撮れないっていう現実がある。地上波のTVドラマなんかもっと大変。刑事が犯人を追いかけているときでも、横断歩道のない車道を渡らせたらいけないって話を聞いたことがある。本当かね? そんな警察いるかよ。そういう映画ではやれないところをずっとVシネが引き受けてきたところもあるから、ビデオショップがなくなっても配信やケーブルテレビでこれからも続いていってほしいと思う。

 コロナ禍で『日本統一』がヒットしたのは、やっぱり配信のおかげだと思う。あれは奇跡のシリーズだよ。まだギリギリVHSが世の中にあった時代から、本格的にDVDの時代になって、そして配信の時代になって、ここまで生き残った。この3つの波を乗り越えたシリーズって、他にないから。

(最後にV☆パラダイスで映画を観る人たちにメッセージを)

 『法廷の死神』は、続編の撮影が終わったところで、第3章、そして第4章、第5章、最終章の6で完結させた。来年あたりには公開できると思う。もっとスケール感を出して、新しい敵も出したりして「俺はここまでやりたかったんだ」というところまでいけた。リーガルドラマだけど、俺のやることだから(笑)。見れば「やっぱりこうなるよなぁ!」って全部つながって見えると思う。今回の第1章と第2章、そして来年の続編、最後まで見てくれよな!

小沢仁志主演の任侠法廷ドラマ第2章
『法廷の死神 第2章』

過去にヤクザ組織の顧問弁護士をしていた弁護士・四神昇は岸組初代組長の岸に呼び出され、島田都議会議員の息子・悟の弁護を頼まれる。暴行の罪で聴取された悟と暴行を受けた未歩の話を聴いた四神と検事の秋山美香。2人は悟と未歩の話が食い違っていることに気づき、共闘することに。調べていくなかでトーラクキッズ・タツヤという男の名前が浮かび上がる。

『法廷の死神 第2章』©2025ライツキューブ

『法廷の死神 第1章』も放送!

人気俳優・小沢仁志が脚本と主演を務め、型破りな弁護士が活躍する異色の法廷エンタメシリーズ第1弾。二代目岸組 若頭・鳴海真也の弁護を初代組長から頼まれた四神。法廷で検事の秋山と対峙する四神は、鳴海の供述に違和感を覚える。

『法廷の死神 第1章』©2025ライツキューブ

PROFILE

小沢仁志(HITOSHI OZAWA)

1962年生まれ。映画『ビーバップ・ハイスクール』シリーズで人気を博し、90年代には『SCORE』('95年)『DEAD OR ALIVE 犯罪者』('99年)などに出演して地位を確立。OZAWA名義で監督・脚本・企画も手がける。近年の出演作に『スペシャルズ』('26年)など。

【映】法廷の死神 第2章

8月23日(日)後9.00~10.30 【再】=24~26・31

V☆パラダイス

公開年・監督・キャスト

25年【監】鳴瀬聖人【出】小沢仁志、青柳翔、辻凪子(ほか)

【映】法廷の死神 第1章

8月3日(月)後4.10~6.00 【再】=17・21・23・31

V☆パラダイス

公開年・監督・キャスト

25年【監】鳴瀬聖人【出】小沢仁志、青柳翔、藤重政孝、山口祥行、本宮泰風(ほか)

『法廷の死神 第2章』予告編をチェック!

Photo:岡田潤(BE NATURAL)/ Text:真鍋新一

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