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【コラム】世界旅情記
『ボスニア・ヘルツェゴビナ サラエボ』

お店がひしめくバザールにドーム型モスクの先には、ネオ・ゴシック建築の大聖堂やパステルカラーに彩られたヨーロッパの町並みが。ボスニア・ヘルツェゴビナの首都「サラエボ」の日常は、東西の文化がすぐそこで隣り合っています。

一瞬で世界が変わる魔法の街

 紺碧のアドリア海に面している東南ヨーロッパ。クロアチアやブルガリアなど聞き覚えのある諸国が集い、その一角にボスニア・ヘルツェゴビナもあります。その歴史をたどると、イスラム勢力のオスマン帝国時代が400年近く続き、その後はハプスブルク家によるオーストリア=ハンガリー帝国が統治するなど、異なる宗教や民族が交錯してきた風土は世界的にも珍しいと言われています。

▲19世紀に建てられた大聖堂

▲広場にあるセビリの水飲み場

 その特異な軌跡を象徴するのがサラエボの中心地にあるミーティング・オブ・カルチャーズです。道の東側には15世紀の古い職人街が広がり、まるでアジアの街角に立っているようですが、くるりと西側を振り返れば、重厚で華やかなクラシック建築が並ぶヨーロッパの景観が望め、同じ1本の道でありながらまったく別の世界が続いています。国民は主に3民族ですが、宗教や文字もさまざま。それぞれの勢力が均衡状態だったため1990年代に起きた内戦は長期化し、壮絶な悲劇を招いてしまいます。

▲オスマン帝国の名残が残る東側

▲ヨーロッパの入り口となる西側

▲東西の文化が出会う場所

悲劇も抱えて歩み始めた国民

 それから30年。今も建物には弾痕が残っていたり、弾薬に使う薬きょうを加工したキーホルダーが売られていたりと、当時を彷彿とさせるものは残されていますが、やっと取り戻した自分たちの国だからこそ、その惨劇を踏まえて新たな時代を築いていこうとする意気込みが現地の人たちから感じられました。3つの民族が8カ月ごとに交代しながら大統領を務める政治システムは、この国ならではの平和を維持するために考えられた秘策です。

▲戦争の遺物がおみやげに変身

▲戦争の犠牲者を追悼する永遠の炎

 ボスニア・ヘルツェゴビナは多民族が暮らす国家の生きた教科書として注目を集め、平和学の教授や学生だけでなく世界中から旅行客も訪れるようになりました。ジェズヴェと呼ばれる伝統的な銅製の小鍋で煮出すボスニアン・コーヒーをはじめ、特別なスパイスを混ぜて炭火で焼く肉料理のチェヴァプチチなど、グルメも人気です。サラエボを象徴するバシュチャルシヤ広場には、18世紀に起源を持つ水飲み場(セビリ)が現在も残され、誰もがノドの渇きを潤しています。この広場は、餌を目当てに集まる鳩も有名。数々の激動に耐え抜いてきたこの場所で、子どもたちが夢中になって平和のシンボルを追いかけています。

▲小鍋で煮出す、伝統的なコーヒー

▲国民食のチェヴァプチチ

PROFILE

浅井みら野(あさいみらの)

アメリカの大学で国際関係とジャーナリズムを学び、卒業後は日本の旅行会社で法人営業を担当。その後、旅行関連のカメライターとして、日本全国、世界各国を訪れ、まだ知られていない土地の魅力をご紹介。

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