ZOOM UP INTERVIEW

ラーテルの脅威の生存戦略とは?
ナショジオ最新作でナレーション

田中直樹(ココリコ)

Photo:平野司

世界最高峰のドキュメンタリーチャンネルであるナショナル ジオグラフィック(※以下、ナショジオ)。その最新作「無双の闘士ラーテル」が、このほど日本初放送される。本作でフォーカスされるのは、“世界一の怖いもの知らず”と称されるイタチ科の哺乳類・ラーテルだ。ナレーションを担当するのは、芸能界屈指の“生き物好き”として知られるココリコ・田中直樹。そこで田中に番組の魅力やラーテルの凄さ、そして生き物たちへの想いを語ってもらった。

「ナレーション収録で一番気をつけたのは、自分の“好き”が出過ぎないようにすること」

ナレーションのお話をいただいた時は、ものすごく嬉しかったです。そもそも僕は20代の頃からナショジオの雑誌を定期購読していて、ずっと大好きだったんですね。

そこから子どもたちやその親御さんに向けた生き物の魅力を発信するイベントに関わるようになり、会場ではナショジオの番組映像を流させてもらってたんですけど、本当に楽しくて幸せな時間で。その後もちょこちょこ声をかけていただいて、最近ではアースデイのイベントなどもご一緒させていただきました。今回のような本格的なナショジオ作品のナレーションは初めてだったので、すごく光栄でした。

ナショジオって、1種類の生き物を本当に深く掘り下げるんです。動物の生態だけじゃなく、地球の科学なんかも余すことなく僕らに届けてくれる。だから、今回の番組みたいにここまで掘り下げられると、ラーテルもきっと照れると思うんですよ。「ここまで僕のこと見てくれてるのか、知ってくれてるのか」って。…もちろんラーテルの本心は分からないですけれども。でも、自分のことをちゃんと見てくれている存在って、ちょっと恥ずかしい反面、嬉しかったりするじゃないですか。ラーテルもそんな気持ちなんじゃないかなと。「無双の闘士ラーテル」は、それぐらい細かいところまで時間をかけてラーテルを追い続けてて、その魅力をふんだんに詰め込んでいる作品だと思います。

もともとラーテルに対して持っていた印象は、「自分より強い相手にも一切ひるまず向かっていく、すごく勇敢な生き物」。毒への耐性があることも知っていました。ただ、今回の映像で観た姿は、僕の想像をはるかに超えていましたね。ライオン、ヒョウ、リカオン、サソリ、毒蛇、ハチ……。相手が誰であろうと、本当に一歩も引かないんです。その怖いもの知らずな様子が作品の中にぎゅっと凝縮されていて、改めてラーテルの凄さを感じました。だからこそ、ナレーション収録で一番気をつけたのは、自分の“好き”が出過ぎないようにすることでした。

僕はあくまでも“イチ動物ファン”なので、気持ちが前に出過ぎると主役であるラーテルの邪魔になってしまう。当たり前ですけどこの番組はラーテルの魅力を伝える作品なので、僕のラーテルに対するリスペクトが自然と声に乗ると信じつつ、ラーテルに向かって“いいトスを上げること”を意識していました。じゃないとラーテル、僕にも噛みついてきますから。「主役は俺なんだ」って。ラーテルにしてみたら当然ですよね。

ナレーションするにあたり、ディレクターさんからは「あまり重くなりすぎないように」ということと、「いつもの田中さんらしく、自然な感じで」というリクエストをいただいていました。本国版のナレーションはすごく重厚感があって、「カッコいいなぁ」と憧れる自分がいたりするんですけど、やっぱり自分らしく、自分の声色で。最初にアドバイスをいただけたので、肩の力を抜いて収録に入れました。もちろん、感情が引っ張られる瞬間はありましたよ、映像の熱量がものすごいので。でも、テンションが上がってナレーションまで一緒に熱くなりすぎると、ファイトシーンの迫力が逆に立たなくなってしまう。だから、少し俯瞰で見ているような、客観的なイメージの声を心掛けていましたね。

その一方、ファン目線で特に刺さったラーテルの魅力が2つありました。まずは“毒を無効化できる身体能力”。蛇やサソリみたいな毒を持つ生き物を食べられるということは、それだけ生き残るための選択肢が広がるということ。これはラーテルの大きな特徴の1つだと思います。でも、それ以上に驚いたのは、“絶対に引かない”その精神力でした。サソリやハチなんて攻撃されたら絶対痛いですし、普通、生き物って反撃されてダメージを受けたら「これ以上は危険だ」と判断して引くと思うんです。でもラーテルは相手の心が折れるまで向かっていく。

あの精神力には本当に驚きました。僕だったら絶対嫌ですもん、あんなに真正面から向かって来られたら。「もう、分かったから!」ってなりますよ。たとえ相手の言ってることが理不尽でも、「すみませんでした」って謝っちゃうと思います。それくらいラーテルって負けん気が強いんですよね。ここまで果敢で勇敢な生き物って、なかなか他にいない。今って、ちょっとしたことで炎上したり、何がハラスメントになるか分からなかったりして、「まずいかな」と思ったら引いてしまう空気感がありますが、ラーテルは一切引かない。もう“炎上上等”なんですよ。

でもやっぱりこれがラーテルの生存戦略なんですよね。だからこそ、他に類を見ない“オンリーワン”の存在になっているんだと思います。時代や周りの空気に左右されず、「絶対に譲らない」というあの気持ちは、今の時代だからこそちょっと見習いたい部分でもありますね。この作品に関わって、僕自身もラーテルの精神力は改めて学びになりました。

多分、今こうして僕らが話している裏でも、ラーテルはアフリカで何かに噛みついてると思うんですよ。なんかすごいですよね。やっぱり、生きるために戦っている生き物なんだなっていうのを強く感じます。そもそも「ラーテルって何?」という方もたくさんいらっしゃるはず。今、地球で生き残っている生き物って、結果的に何らかの“能力を持ったもの”が種を残してきている。その中でもラーテルは、本当に生きる力が突出していると思います。毒を無効化する能力もそうですし、体の強さも、気持ちの強さも含めて。「無双の闘士ラーテル」を観て、「こんな生き物がいるんだ」という驚きや、生き物の多様性を感じてもらえたら嬉しいですね。そして、ラーテルの“負けない心”みたいなものを、この作品から感じ取ってもらえたらいいなと思います。

ナショナル ジオグラフィックで知られざるラーテルの世界を!

「世界一怖いもの知らずの動物」としてギネスブックにも認 定された“ラーテル”。比較的小柄ながらも「世界一怖いもの知らず」とされる理由は何なのか? ラーテルの大自然を生き抜く術にカメラが迫る。ナレーションは、動物好きで、大のナショジオファンである田中直樹が担当。これまでナショナル ジオグラフィックが開催するイベントへの参加はあったが、番組での初ナレーションに挑戦する。

『無双の闘士ラーテル』© Earth Touch

PROFILE

田中直樹(NAOKI TANAKA)

1971年4月26日生まれ。お笑いコンビ「ココリコ」として活動する一方、俳優やパーソナリティなど多方面で活躍。芸能界随一の“生き物好き”としても知られ、動物番組のMCやネイチャードキュメンタリーのナレーションも務める。2015年より「ナショジオ オープンキャンパス」でナビゲーターを担当。今春アースデイ開催の「ナショナル ジオグラフィック ワンダーキャンプ」ではスペシャルトークセッションに登壇した。

無双の闘士ラーテル

【二】7月23日(木)後10.00~11.00

ナショナル ジオグラフィック

Photo:平野司、Text:足立美由紀

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