ZOOM UP INTERVIEW
日本と韓国の縁を感じながら
アニメ声優に初挑戦
矢吹奈子
Photo:平野司
韓国で大きな話題となったアニメ映画『縁の手紙』がついに9月25日(金)に日本公開となる。日本語吹替版で主人公・ソリの声を演じる矢吹奈子に声優初挑戦の感想を伺った。
「主人公の強さに私自身も支えられていた」
ずっと声のお仕事をしてみたかったので、お話をいただいたときはすごくうれしかったです。もともと韓国でアイドル活動をしていたこともあって、この作品で声優デビューができるということに縁を感じています。
韓国のアニメを今まで観たことがなかったので、どういう作品なのかも含めてすごく興味があったのですが、オリジナル版を観たときはまず映像の綺麗さに感動しました。韓国のカップラーメンとか、ジャージャー麵が懐かしいな~とか……。学校のチャイムの音が日本と違ったり、夏に校内にテントを張ってキャンプをするイベントがあったり、そういう韓国の生活や文化も楽しみながら観られたのもよかったですね。演者である前に、観客として泣いたり笑ったりしちゃいました。
(『縁の手紙』は韓国のデジタルコミックであるウェブトゥーンとして2018年に公開されたベストセラー作品。日本でも単行本が発売されたほか、現在もLINEマンガで配信中。いじめに遭い、田舎の学校に転校することになった主人公・ソリは、机のなかに隠された謎の手紙の差出人を探して、不思議な体験をすることになる――)
学園が舞台というと、恋愛もののイメージが強い気がするんですけど、この映画は男女の深い友情を感じられるところが見どころだと思います。今はSNSが中心の時代だと思いますが、手書きのお手紙だからこそ味わえる温かさを思い出してもらえたらうれしいですね。
私が演じた主人公のソリは新しい学校に転校したばかりで映画の最初のほうではすごく緊張しているんですが、すごいのは自分の意思を強く持って、「これが正しい」と思ったらそれを信じてちゃんと行動するところ。この強さは私にはない部分だと思いました。役を演じながら、「あぁ、かっこいいな……!」と思っている自分に気がついて、私自身もその強さに支えられていたのかなと思います。学校のなかだとどうしても、「みんながそう言ってるから私もついて行こう」みたいな風潮があると思うのですが、私も自分の意見をちゃんと口に出せたらよかったなと。それはソリというキャラクターに寄り添うことで思えたことですね。もしこの映画を観たら、大人の人ほど自分の学生時代を思い出して、きっと同じことを考えるんじゃないのかなと思います。

「声だけでお芝居をするって、こんなに体力を使う」
まず台本を開いて驚いたのが、ト書きに「ハッ」とか「ンッ」とか、息遣いがちゃんと書かれていたこと。それまでの映像作品の台本にはなかったので、「これはどうしたらいいんだろう?」と思いました。今回は日本語吹替でもあるので、元の韓国語のセリフをお手本にできてすごくありがたかったです。カラオケで台本を読む練習をしてずっと準備していました。
本番の収録をする1か月前くらいにテストで一度声を録ったのですが、「目の前のマイクに集中して声を出すように」と教わりました。舞台でも映像でも、お芝居をするときは周りに広がるように声を出すことが多いのですが、アニメのときはちょっと違うんですよ。まず映像が先にあって、そのなかにいるキャラクターに自分の感情を合わせていく……という作業で、難しかったですね。気持ちをマイクの前に集中させて、声だけで感情を表現することって、こんなに体力を使うものなんだなぁ……と。収録していた期間は毎日爆睡でした(笑)。
(映画の公式サイトには、ソリと一緒に手紙の主を探す同級生・ドンスンを演じる小野賢章と並んでアフレコをする動画が公開されている)
先にスタジオで小野賢章さんが一人で収録されている現場を見学させていただきました。なんで声だけでキャラクターの動きまでも表現できるんだろう?と不思議に思って、つい見入ってしまいましたね。動いているときの息遣いまでが、映像にピッタリとリンクしているんですよ。ご本人は同じ動きをしているわけじゃないのに。
私も基本的には1人の収録が多くて、不安すぎて休憩時間のたびにブースの外に出ては、周りのみなさんに「大丈夫でしたか?」って聞いてしまいました(笑)。「アニメらしくしないといけないのかな?」と思ってハキハキと声を出してみたりもしたんです。最終的には音響監督さんたちとお話しながらいろいろと試して、「そのままの声で演じてみるのが自然でいいよ」ということで、自分の思うままに演じたお芝居を使っていただきました。映画のなかの時間の経過に沿って順番に録ってくださったので、それもやりやすかったですね。スタッフさんに気遣っていただきながら、良い環境でお芝居ができました。
(オリジナルの韓国語版ではポップデュオ・AKMU〈アクミュー〉のメンバー、イ・スヒョンがソリを演じ、主題歌も歌っている)
AKMUの曲はたくさん聴いていたので、やっぱりプレッシャーはありましたよね。すごく素敵な声で、同じK-POPの大先輩なので。スヒョンさんが監督とよく相談しながらソリの役を作られていたというエピソードを読んで、「あぁ、ソリってこういう子なんだ」と、そのやりとりも自分の演技に取り入れていました。
主題歌も本当に素敵な楽曲だなと思って聴いていたので、「日本語版でもソリの声を演じている人がそのまま歌った方が作品としていいよね」ということになって、私が新しく日本語の歌詞をつけて歌わせていただくことになりました。歌はずっとやってきたことではありますが、1人で1曲を丸ごと歌う機会は少なかったですし、1人で何時間もスタジオにいるのも、もしかして初めてだったかもしれないですね。私が韓国で活動していたおかげで、元の歌詞の意味を直接理解しながら日本語に訳すことができたのはよかったです。
韓国語をそのまま日本語にすると、すごく長くなっちゃうんです。それを音の数に合わせて日本語に当てはめるのがすごく難しかったですね。作曲家の方とも連絡を取り合って、「映画のなかに散りばめられている部分的なワードは生かしていこう」というお話もしました。その上で、なるべく自然に聴こえるようにちょっとだけ音の数を日本語向けに調整しました。韓国語のオリジナル版を聴いていた方にも喜んでもらえたらうれしいです。韓国のファンの方からも「楽しみです!」とコメントをけっこういただいていますし、まずは主題歌を配信で聴いて、作品を想像してもらえたらと思います。

「やっぱり私は新しいことに取り組むことが好きみたいです」
(矢吹が在籍したIZ*ONEが活動を終了してから早5年。12人のメンバーたちは新しいグループを結成したり、ソロで歌手や女優を続けたりと幅広い活躍を続けている)
韓国で活動を続けている子もいるし、日本の映画やドラマに出てくれる子もいるし、本当にそれぞれの場所で、という感じですよね。みんなが元気にしているかがすぐ目に留まるのはSNSの良いところで、みんなの活躍を見ながら、私も「よし、自分もがんばろう」という気持ちになります。離れていてもメンバー同士なんだという想いは変わらないですし、お互いに支え合って、力になり合っているなと感じています。
主題歌は韓国のスタジオでレコーディングしたんですよ。そのときにメンバーに「(韓国に)行くよ!」って連絡をしたら、すぐにみんなが集まってくれて。こっそり「『연의 편지』(ヨネ ピョンジ/縁の手紙)の日本語吹替版の声優をやることになったんだよ」と言ったら「すごい!」「奈子にピッタリだと思う!」と喜んでくれました。
今回は声優に初めて挑戦したり、主題歌も初めて担当させてもらったり、本当に新しいことづくしのお仕事でした。それでわかったのですが、やっぱり私は新しいことに取り組むことが好きみたいです。今までに見せなかった自分の姿を出したり、イメージにない役柄に挑戦したり、これからもたくさんチャレンジをしていきたいなと思っています。

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PROFILE
矢吹奈子(Nako Yabuki)
2001年生まれ。子役として活動後、2013年にHKT48の3期生としてデビュー。2018年には日韓合同の期間限定ユニット・IZ*ONEのメンバーに選ばれ、韓国を拠点に活動の幅を広げる。活動終了とHKT48卒業後はドラマ『サレタ側の復讐~同盟を結んだ妻たち~』、ミュージカル『ブラック・ジャック』ピノコ役など、俳優として活躍中。
映画『縁の手紙』
9月25日(金)全国公開
友人をかばったことでいじめの標的となり、田舎の学校へ転校することになった少女・ソリ。新しい環境になじめず、心を閉ざしていた彼女は、ある日、机の中に隠された不思議な手紙を見つける。その言葉に導かれて出会ったのは、ぶっきらぼうな同級生のドンスン。 差出人を知っているという彼とともに手紙の続きを探していくうちに、手紙に込められた「本当のメッセージ」が明らかになっていく――。
監督:キム・ヨンファン/原作:チョ・ヒョナ『縁の手紙』(LINEマンガ)
【声】矢吹奈子、小野賢章(ほか)
映画『縁の手紙』の予告編をチェック!
Photo:平野司、Text:真鍋新一、Hair&Make:舩戸美咲、Stylist:山科美花