ZOOM UP INTERVIEW
25年ぶりに演じた伝説のヒーロー役で
俳優としての原点に立ち返る
要潤
Photo:平野司
国民的ヒーロー・仮面ライダーの生誕55周年記念作として、『アギトー超能力戦争ー』が公開される。デビュー作にして当たり役である仮面ライダーG3こと氷川誠を25年ぶりに演じる要潤に、その心境を伺った。
「『仮面ライダーアギト』は僕の原点で、もちろん代表作」
実はこの映画は「逆オファー」といいますか、出演者である僕らのほうからお世話になっていたスタッフのみなさんに「もうすぐ25年目ですし、やってみませんか?」と持ちかけた企画でした。TVシリーズが終了してからも関係者で集まって食事をする機会が定期的にあって、当時のままでずっと続いてきた関係性のなかから自然と生まれたのが今回の話だったんです。最初は軽い気持ちから出てきた話でしたが、このような形で実現させることができて本当にうれしいし、みなさんにはとても感謝しています。時代は変わっても、僕らの気持ちや情熱みたいなものはまったく風化していない。この映画が実現できたのは、そのことが非常に大きかったんだと思います。あとはなんといっても、TVシリーズの頃から僕らを応援してくださっている方々がたくさんいらっしゃることのありがたさですね。当時観ていた人も、25年も経てば結婚してお子さんがいらっしゃる方も多いでしょうし、「お父さんは、こんな仮面ライダーを見て育ったんだよ」という話をしながら次の世代に引き継いでくれたら、僕たちも久しぶりに演じた甲斐がありますね。
(『仮面ライダーアギト』…2001年に「平成仮面ライダーシリーズ」の第2作として制作され、前作『仮面ライダークウガ』に続いて特撮テレビドラマのファン層を中高生や主婦までもに広げ、シリーズの未来を切り拓いた金字塔的な作品となった。仮面ライダーアギトこと津上翔一を演じた賀集利樹、ユニットを装着することで仮面ライダーG3に変身する警察官・氷川誠を演じた要潤はともに『仮面ライダーアギト』が俳優デビュー作であり、現在まで続くキャリアの第一歩となった。)
僕自身、これまでいろんな作品に携わらせていただきましたが、『仮面ライダーアギト』は僕の原点で、もちろん代表作だと思っています。観ている人たちと僕とでその想いが一致している作品を持っているというのは、俳優としてすごく幸せなことです。自分が気に入っている役や作品が、必ずしも世間的に有名でない場合も多くて、そういう意味でも特別な作品なんですよ。

現場で感じた「25年前の空気感に戻っていく不思議な感覚」
氷川を演じるのは確かに25年ぶりですが、重みのようなものはそれほど感じませんでした。それは25年前の続編でありつつ、新しくシリーズから独立したものを作ろうと意識したからかもしれません。同じキャストが同じ役で、同じスタッフが25年後にもう一度集まって新作を作るなんて、世界的にも稀なことですよね。だからこそ、ただの同窓会にはしたくない。大げさかもしれませんが、今までの俳優人生でやってきたことを全部ここにぶつけてみたい。この作品をキャリアの集大成にしたい。それがレギュラーキャストで共通の想いでした。『アギトー超能力戦争ー』と、あえて「仮面ライダー」の名前をタイトルから外したのも、白倉伸一郎プロデューサーがきっとこちらの想いを汲んでくださったのだろうと思います。
(2020年には、要が自らの公式YouTubeチャンネルで共演者たちを招いた座談会の動画を公開し、SNSで質問を募集したことも当時大きな話題となった。そういったことも後押しとなって実現した完全新作『アギトー超能力戦争ー』。かつての仲間たちと再び現場を共にすることになった感想を聞いてみよう)
それぞれ25年の間にたくさんの経験を積んで、それなりに変わってきたはずなのに、人間って、基本的な部分は何年経っても変わらないんでしょうね。みんなが揃って現場に入ると、すぐにそれぞれの役の立ち位置に戻って、25年前の空気感で落ち着いている瞬間が何度もありました。役のうえでもオフのときでも、人間関係の役割分担がまったく変わらない。変な話、この25年間の自分が一気にゼロに戻っていくというか、「今まで自分はなにもしてこなかったんじゃないか?」と思うくらい。急に時計の針がキュルキュルと巻き戻るような不思議な感覚でした。「そうか……この世界は25年前に完成しているのだから、この世界に従って演じていれば間違いないんだ」という気持ちです。
僕らが言い出したことなので、こりゃ失敗できないぞ……! という緊張感はありましたけど(笑)、だからと言って細かい演技のことまでは話し合っていないです。それぞれの役のことはそれぞれがちゃんと考えて、現場のお芝居で発表してやろう……みたいなところがあって、これは25年経った今だからこその楽しさでした。

「僕のなかのほとんどは、氷川誠で占められてる」
25年前の自分の映像を見返すと、やっぱり照れくさいですね(笑)。もちろん一生懸命、がむしゃらにやっていたんですが、まだまだ未熟でした。当時、監督さんたちが表現したいことがわかっていたのに、実力不足でやりきれなかった。そんな不甲斐ない思い出もたくさんあります。自分も後にいろんな作品を経験して、表現できる幅も少しは広げられたのかなと思っていたので、当時の自分へのリベンジと、監督への恩返しが少しでもできていたらいいですね。そうそう今回、ある場面で田﨑竜太監督から「ここのセリフ、どう思う?」と聞かれたことがあって、「え、僕に聞いてくれるんですか?」と思ったんですよ。昔はほんのひとつのセリフでも何度もやり直しをしていたくらいで、こちらからお返しできることがほとんどなかったものですから、僕を頼って任せてくれたことが本当にうれしくて。
俳優という仕事って、満足することがないんです。映画や舞台、TVシリーズ、ひとつひとつの大きな仕事をやり遂げた時の達成感はありますが、その陰で自分の演技については「あそこはもっとできただろう」「ここはもっとがんばれただろう」と思うことばかりです。『仮面ライダーアギト』は本当に最初の最初でしたから、僕のなかでずっと心残りになっていたことも多くて……それを今回の現場で回収できた。まさかこんな機会がいただけるなんて、当時の自分には「あの時がんばったおかげで、25年後にもう一回氷川ができるよ」と言ってあげたいですね。
(そして25年という時を経て、氷川誠というキャラクターはどのように蘇るのか。そして、この25年間、要にとって氷川誠とは、いったいどんな存在だったのだろうか)
氷川はTVシリーズの頃からずっとそうでしたが、真っ直ぐすぎるくらいまっすぐな正義感を持った男で、決して人を傷つけたりはしない。今回、彼は映画の冒頭からひどいトラブルに巻き込まれているのですが、それも彼のまっすぐすぎる性格ゆえにあり得るのかもしれない、そんなシチュエーションです。この意外性のあるストーリーも魅力を感じながら演じていました。演じていて、とてもしっくり来たんですよ。いろんな謎に立ち向かっていた氷川が、今回は謎を抱える側になる。ちょっとミステリーっぽいというか、それは昔のTVシリーズにはなかった要素です。

PROFILE
要潤(Jun Kaname)
1981年生まれ。2001年「仮面ライダーアギト」氷川誠役で俳優デビュー。「タイムスクープハンター」(2009年~)、連続テレビ小説「らんまん」(2023年)、『新幹線大爆破』(2025年)など映画、ドラマ、バラエティと幅広く活躍中。放送中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」には明智光秀役で出演中。
映画『アギト-超能力戦争-』
4月29日(水)全国公開
人々が“超能力”に目覚めた世界。その力を好き勝手にふるい、街を混乱へと陥れる者たちが現れる。警視庁未確認生命体対策特殊武装班=通称Gユニットが事件解決に動き出した。だが、その最前線に立つべき男、氷川誠(要潤)の姿はなかった。
原作:石ノ森章太郎/監督:田﨑竜太/脚本:井上敏樹
【出】要潤、ゆうちゃみ、藤田瞳子、山崎潤、柴田明良、秋山莉奈、田辺季正、駒木根隆介、今井悠貴、岩永洋昭、鈴之助、青島心、金田哲(はんにゃ.)、升毅、ベッキー、樋口隆則、賀集利樹(ほか)
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Photo:平野司 Text:真鍋新一 Hair&Make:佐々木麻里子 Styling:今井聖子(Canna) 衣装協力:ウジョー