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【コラム】世界旅情記『愛知県犬山市』

日本最古の木造天守が町を見守る、「犬山市」。国宝でもある犬山城が築かれた江戸時代に、同じく犬山祭も始まりました。13輌もの巨大な車山(やま)が練り歩く、からくり人形の演舞は必見。超絶技巧の連続に息をつく暇もありません。

春を彩る、豪華絢爛な車山

ぴーひゃら、ドンドン。お囃子と太鼓の音に誰もが浮足立つ、4月最初の週末。屋根を優に超す高さ8mの車山が、町ごとに続々と曳き出され、犬山城近くにある針綱(はりつな)神社を目指します。お揃いの法被を着た男性陣が威勢よく声をかけ合い、その様子に町民も誇らしげです。

▲400年近く続く、豪華絢爛な風景

▲桜越しの犬山城と針綱神社

▲標高80mの城山に築かれた犬山城

江戸時代の町割り(区画)がほぼそのままの形で残る城下町には、黒い格子戸や漆喰の壁など歴史情緒が感じられ、そこに個性豊かな車山が行列を成していく光景は、時代を越えて人々を魅了してきた美しさが息づいています。

▲狭い路地を進む巨大な車山

針綱神社の目の前に来ると、道は直角に曲がっているので、車山も方向転換しないといけません。しかし、車山の重さは3トン以上。手子(てこ)たちが、かけ声と共に車輪をギシギシと軋ませながら持ち上げる「どんでん」は迫力満点で、このお祭りの見せ場のひとつになっています。

▲神社前で道は直角に方向転換

▲力と息を合わせて行う、どんでん

▲車輪を滑らせて方向転換する、車切

からくりの舞と幽玄な夜

日曜日が本番の本楽祭に対し、土曜日は試楽祭と呼びます。試楽祭では、13輌の車山が一堂に集まると次の主役は、人から人形へ。からくり人形が、車山を舞台に縦横無尽に動き回ります。鉄棒でくるくる回ったり、浦島太郎がお爺さんに変化したりと、思い思いの演目が披露されますが、その滑らかな動きは小さな人間そのもの。舞台下の限られたスペースで巧みに操作する、熟練の技術に観客の視線は釘付けです。

▲勢ぞろいした車山は圧巻の一言

▲神社を前にからくり奉納

▲笑いと感嘆を誘う、からくり

夕暮れになると車山は一変し、 四方が無数の提灯で埋め尽くされます。徐々にろうそくの火が灯り始めると、夜空にぼんやりと明かりが浮かび上がり、辺り一帯が幻想的な雰囲気に。車山は夜車山(よやま)となり、再びそれぞれが出発した場所を目指し、ゆっくりと戻っていきます。長かった一日の終わりは最後まで華やかです。

▲灯火はひとつずつ手作業で

▲提灯をまとい、夜の部へ

▲夕暮れに浮かび上がる、夜車山

翌日の本楽祭も車山は再び同じルートを巡ります。いよいよ針綱神社を正面に1輌ずつ順番にからくりが奉納され、お祭りは最高潮を迎えるのです。この伝統は「山・鉾・屋台行事」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。豪快さと繊細さの両方を兼ね備えている犬山祭。今年も満開の桜吹雪が舞い上がり、町の大舞台に花を添えてくれることでしょう。

▲夜車山に照らされた城下町

PROFILE

浅井みら野(あさいみらの)

アメリカの大学で国際関係とジャーナリズムを学び、卒業後は日本の旅行会社で法人営業を担当。その後、旅行関連のカメライターとして、日本全国、世界各国を訪れ、まだ知られていない土地の魅力をご紹介。

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