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【コラム】世界旅情記『モンゴル(東アジア)フイ・ドローン・ホダグ』

今回は2026年の干支にちなみ、馬にゆかりのあるモンゴルをご紹介。大草原が広がる「フイ・ドローン・ホダグ」では、時間になると大群の馬が駆け抜けます。

東アジアに広がる遊牧民の国

淡い青空と山吹色の大地が果てしなく続く、モンゴルの草原。聞こえてくるのは風の音だけで、たたずんでいると、まるでこの世に存在するのは自分ひとりだけと思えてくるほど、この国は広大です。実際、モンゴルの国土は日本の4倍以上の広さでありながら、人口は日本の約40分の1で、世界で最も人口密度が低い国のひとつとなっています。

▲地平線が遠い、モンゴルの大草原

人口の半数近くが暮らす首都ウランバートルには高層ビルやマンションなど近代的な街並みが広がりますが、都市の中心部を少し離れるだけで景色は一変します。ゆるやかな丘陵が幾重にも重なり、遠くには家畜を引き連れた遊牧民の姿が。フイ・ドローン・ホダグもウランバートルから車で約1時間、西に向かった先にある草原地帯です。毎年7月になると国民的スポーツの祭典「ナーダム」が開催され、少年少女が自慢の愛馬にまたがり、約20キロもの長距離を疾走しますが、それ以外の時期はいたって穏やかです。

▲伝統的な移動式住居「ゲル」

▲自然崇拝の祭壇「オボー」

草原を舞台に始まる日々の営み

日が昇ると、まずは羊の大群が水場を目指して草原をゆっくりと横断していきます。羊はゴマ粒のように遥か彼方にいますが、移動の時に立ちのぼる砂ぼこりが、静寂だった風景画の世界に躍動感を与えます。群れの最後尾を馬に乗った遊牧民がゆっくりと追随し、保護者の存在に羊も安心している様子です。

▲広野をゆく羊と遊牧の人

お昼近くになると、今度は馬が一斉に横切っていきます。隊列を組んでいるかのように足並みをそろえているグループや、駆け足から急に立ち止まってこちらを見つめてくる馬など、羊のように集団で移動しているわけではなく、ペースもそれぞれです。華奢な体つきの子馬も集団から置いていかれないよう懸命に歩き、その傍で母馬が優しく付き添います。

▲どこからともなく出現した馬

▲隊列のように規則正しい集団

▲仲睦まじく、微笑ましい馬の親子

行列が通り過ぎてから間もなく、少し遅れて遊牧民が1頭の馬を引き連れてきました。もしかしたら迷子になってしまった馬を探しに行っていたのかもしれません。自分の馬と並走するように2頭の手綱を巧みに操作しています。モンゴルの歴史は常に馬と共にあり、馬は大切な相棒であり友人だといいます。颯爽と走り抜けていった天性の騎馬民族には目の前の雄大な景色がしっくりと馴染んでいました。

▲大群となって移動する羊と牛

▲幼さ残る少年も立派な馬使い

▲茜色に染まる夕焼けも抒情的

PROFILE

浅井みら野(あさいみらの)

アメリカの大学で国際関係とジャーナリズムを学び、卒業後は日本の旅行会社で法人営業を担当。その後、旅行関連のカメライターとして、日本全国、世界各国を訪れ、まだ知られていない土地の魅力をご紹介。

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