市原隼人

80年代の中学校を舞台に、給食マニアの教師と給食マニアの生徒が美味しい給食の食べ方をめぐりバトルを繰り広げる『おいしい給食』。ドラマシリーズの完結編として映画が公開されるこの大人気シリーズは、すでにドラマが3シーズン目に突入、劇場版も3作品が制作されている。そしてこのほど劇場版第4弾が公開！　給食をこよなく愛する主人公の中学教師・甘利田幸男を演じ続けてきた市原隼人に、最新作へかける思いを聞いた。

「普段とは全く異なる環境で新たな領域に踏み込めた気がします」

　最新作はシーズン3の舞台となった函館の忍川中学校の生徒たちと修学旅行に行く物語です。前作『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』から再びの劇場版ですが、甘利田の給食対決の初代ライバル・神野ゴウに続く“アレンジ給食の天才”粒来ケンにもう一度しっかり向き合い、そしてしっかり卒業させたいという想いがあり、映画という形で戻ってきました。

　今回は修学旅行ということで北海道を出発し、青森・岩手を巡ります。青森ではせんべい汁、岩手ではわんこそばをいただきますが、実はこれまで給食では火を使うことはなかったので…。郷土料理、そして熱々のせんべい汁を前に甘利田がどんなリアクションをするのか、撮影前から早く現場に行って確かめたくてクランクインが待ち遠しかったです（笑）。

　青森の撮影初日は雪で現場に行くことができないかもしれないという危機もあり過酷なロケに耐えられるのか不安もありましたが（笑）、十和田湖の前で食べるせんべい汁はより美味しいですし、その土地ならではの空気感も伝えられ、普段とは違う環境で、甘利田としていろいろなものに思いっきり振り回されたいと想いながら演じることができ楽しかったです。今回は新たな領域に踏み込めた気がします。

　いつも撮影のために、じっくり構想を練ります。特に給食のシーンは、食事の食べ方や動きについては脚本には書かれていないので、すべて毎回手探りのアドリブです。今回、生徒を担ぐシーンがありますが、あれもその場の思いつき。体力には自信があるほうですが、何が起こるか分からない現場なので自分が一番ハラハラしながら臨んでいます（笑）。

　そんな今作の撮影で最も印象深かったのは卓球のシーンです。私もケン役の田澤泰粋君も経験がなく、プロの方に教わってからは2人で何日も、長い時では1日6時間ほどの自主練をしました。本番では台詞を言いながらラリーをしなければならなかったのですが、泰粋が懸命に頑張っていて、その姿を見て胸が熱くなりました。

　劇中ではケンや生徒たちが涙ぐむシーンもありますが、『おいしい給食』は偽物の芝居はしないのであれはリアルな涙です。本当の主役は子どもたちなので、『おいしい給食』の意義に触れ、作品に携わることで役者として人として成長してほしいと願っています。現場に行きたくなるような環境づくりを一番に心がけてきたので、今回の撮影でもそんな一体感と集中力が自然とできていましたし、絆として映像でも感じられたので嬉しかったです。

　『おいしい給食』が新たな夢を届けられることにスタッフ・キャスト一同胸を躍らせています。三地域を巡って本当に贅沢な作品ができましたので、このお祭りのような賑わいを楽しんで日々の活力にしていただきたいです。

ファミリー劇場では劇場版第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』を放送！

1989年冬、函館。忍川中学校の教師・甘利田幸男（市原隼人）は大の給食マニア。しかし、赴任して1年以上経つも念願の「アレ」が献立に登場することはなく、生徒で食のライバル・粒来ケン（田澤泰粋）と毎日密かに給食バトルを繰り広げていた。そんなある日、忍川中学が給食完食のモデル校に選定される。不穏な空気を察知した甘利田は、愛する給食を守るために立ち上がるが…。

Photo：平野司 ／ Text：足立美由紀 ／ Styling：小野和美／ Hair&Make：大森裕行（VANITÉS）