ZOOM UP INTERVIEW

“家族”の意味を問い直す感動作で
心の奥を見せない経営者を体現

平岳大

Photo:平野司

東京を舞台に、家族を“貸し出す”サービスを通して人の孤独やつながりを描く映画『レンタル・ファミリー』。『37セカンズ』で世界的に注目されたHIKARIが監督・脚本を担い、『ザ・ホエール』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーが主演を務めた。

昨年9 月に開催されたトロント国際映画祭を皮切りに、世界の映画祭で絶賛されているアメリカ・日本合作映画である本作。共演には、真田広之プロデュース・主演の戦国スペクタクルドラマ『SHOGUN 将軍』に出演し、国際的に活躍する平岳大、Apple TVでこのほどシーズン2が世界同時配信されるアメリカ発ゴジラ実写TVドラマ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」シリーズの山本真理、『ナイトフラワー』ほか話題作への出演が続く森田望智、そして日本を代表する名優・柄本明と個性豊かな実力派俳優らが集結。

そこで、日本の美しさ、優しさを伝えるこの感動作でレンタル・ファミリー会社を経営する多田信二を体現した平に、作品への思いや海外で活動するマインドについて伺った。

「いろんなことを試しながら多田という役柄に近づいていきました」

 この作品はオーディションでの選考でしたが、出演オファーの一報をもらったときはブダペストにいて、違う作品を撮っていました。海外作品のオーディションってまず“ビデオレター”みたいな自己アピールテープを自分で作るんです。今回もまずそれをHIKARIさんに送ったらコールバックがあって、今度はZoomでいくつかのシーンを実際に演じて。普通のオーディションだと2シーンくらいを試演してジャッジとなるんですが、HIKARIさんはいろんなことを試したいタイプの監督さん。1時間半くらいのセッションを2回行うという濃いオーディションだったので、役をいただいたときは「あぁ、よかった〜」と安堵したのを覚えています(笑)。

 僕は「レンタル・ファミリー」の創業者である多田を演じています。彼は経営者ではあるけれど、レンタル・ファミリーのサービス提供現場ではいろんな役柄を自ら演じるような人。準備段階では実在するレンタル・ファミリー業を営む方にインタビューをしたり、葬儀社のスタッフを装うシーンを演じるために、あの独特の言い回しを動画で観て、何度も練習したりしました。

 多田はつかみどころがない、ちょっと適当な男ですが、一般的なビジネスマンではなくてどちらかと言うと<ビジョナリー=先見の明>を持っている男です。だから本当の意味では“いい加減”ではないかもしれないし、彼には深い傷とか埋められない何かがあるのかもしれない。でも、それを見せなかったりするので、逃げ道を作りながら物事と100%向き合わずにいる男なのかなと。ただ、追い詰められるまではクネクネと切り抜けているという意味では、いい加減なのかもしれませんね(笑)。 HIKARIさんからは「カメレオンみたいな役柄にしたい」と言われていて、役づくりについてはかなり話をしました。参考になればと思って、日本に帰ってきたときに僕の周りにいる“一番適当な友達”とご飯を食べに行ったりもして(笑)。いろんなことを試しながら多田という役柄に近づいていきました。

「ブレンダンは本当に“いいヤツ”で、現場がすごく楽しかったです」

 ブレンダン・フレイザーは、本当に素敵な人でした。見たまんま…いや、それ以上に“いいヤツ”です(笑)。紳士だし、アドリブを仕かけてきたりして一緒に演じていて役者としても面白いし、すごく気さくであたたかい。彼は膝の調子が良くないみたいで、中腰になって演技するシーンなどは大変だったと思うんですけど、文句ひとつ言わずに何度も演じていて。この作品をアカデミー賞受賞後の主演一作目として選んだ、その意気込みみたいなものを間近で感じました。

 撮影以外でのブレンダンとの思い出は、劇中シーンとして登場する「チームラボプラネッツ(東京・豊洲)」にみんなで行ったこと。ブレンダンの家族も来て、僕と山本真理さんと日本のスタッフチームとHIKARIさん、合わせて7~8人くらいだったかな。通常の営業時間が終わった後に特別に入場させていただいて、貸し切り状態ですごく楽しかったな(笑)。

「海外で絶賛されている理由は、おそらく作品が伝える“人恋しさ”」

 もともとこの作品に参加したいと思ったのは、監督が手がけた台本が素晴らしかったから。HIKARIさんはハリウッドで活躍されてる女性監督さんなんです、日本とアメリカの両方を分かっている人じゃないと書けない視点があって。

 実は“レンタル家族”って、海外で類似の代行サービスはあるものの、映画で描かれるような提供ビジネスは基本的に日本独自の文化だそうです。でも、映画ではそのサービスを現実から飛躍させたり、変に誇張して見せたりしていなくて、むしろ“人間とは何か”というところをど真ん中で描いている。ちょっと異質に見えるサービスかもしれないけど、外国の方が見ても「なるほどな」と思う部分があるので、普遍性や共感性の高い題材なんですね。

 この作品が海外で絶賛されている理由は、おそらく作品が伝える“人恋しさ”だと思うんです。都会にいると忙しくて、家族のこととか気にかけられない時間が増えるじゃないですか。でも、ふとしたときに「人ってこんなに寂しいんだ」と気づき、そして「自分もこんなに寂しいんだな」と思う瞬間がある。そういう感覚はおそらく万国共通で、そこが琴線に触れるんだろうなと。

 僕自身、この作品を試写で観て、結構涙が出たんです。いつもなら自分の作品は気持ち的に正面から観られなくて、斜めに構えちゃったりするんですけど、今回はがっつり泣きました(笑)。お涙頂戴じゃなくて、人の心にそっと触れるような優しさがあって、劇場を出るときに少し気持ちが変わる。そういう映画になっています。

 最後のシーンも本当に良くて、あの繊細さが外国の方にも伝わればいいな。この作品は本当に疲れたときに観てほしい映画なので、素直な気持ちで観て、感じて、そしてほっこりしてもらえたら嬉しいですね。

「物怖じせずに主張できる強さ、それを語れる英語力、そしてハートは海外作品に出演するなら必須の条件」

 今は海外を拠点に活動していますが、海外で日本人が活躍するには語学力が絶対に必要ですね。1にも2にも語学力、そして3番目に「自分の意見をちゃんと言う」こと。真理さんは「モナーク」でもご一緒して今回2作目の共演ですが、彼女は主演のカート・ラッセルにも自分の意見をしっかり言える人。演技へのハートもあるし、頭もいい。

 物怖じせずに主張できる強さ、それを語れる英語力、そしてハートは海外作品に出演するなら必須の条件。海外の現場って“どうぞどうぞ”って活躍する場をお膳立てしてくれる世界じゃないから、自分で切り開かないといけないんです。そして主演とか脇役とかは関係なく、現場に来た時点でイコールな世界。そこでいかに自分を出していくかだと思っています。

PROFILE

平岳大(Takehiro Hira)

1974年7月27日生まれ。コロンビア大学大学院を卒業後、外資系企業を経て27歳で俳優デビュー。舞台・映画・ドラマと幅広く活躍。近年はハワイを拠点に『グランツーリスモ』『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』、エミー賞18冠の米国ドラマ『SHOGUN 将軍』など海外作品にも多数出演。2月には「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」シーズン2が配信予定。

レンタル・ファミリー

2月27日(金)全国公開

【監】HIKARI【出】ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマン シャノン 眞陽(ほか)

あらすじ

東京で暮らす落ちぶれた俳優フィリップは、日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。そんななか、“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。そこで見つける、生きる喜びとは? 世界が経験したことのない未知の出会いに満ちた、感動ドラマ。

映画『レンタル・ファミリー』の予告編をチェック!

Photo:平野司 Text:足立美由紀 Hair&Make/mio

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