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【コラム】世界旅情記
『チェコ(ヨーロッパ)オロモウツ』
        
      
              秋が過ぎ、寒さも本格的になる季節。それはヨーロッパにとって最大の祭典であるクリスマスの始まりです。クリスマスマーケットと聞くとドイツが有名ですが、文化の町「オロモウツ」をはじめ、隣国のチェコも負けていません。
バロック芸術が集う、文化の街
チェコの首都プラハから東へ鉄道に乗ること約2時間、モラヴィア地方の都市オロモウツに到着します。都市の規模は国内6番目ですが、中世の頃よりカトリックの司教区が置かれたことで発展。保有する文化財の数はプラハに次いで2番目の多さを誇ります。旧市街を歩くと荘厳な教会、華やかな宮殿が目に入り、思わずうっとり。ここでは街全体が現在も中世の空気をまとっているのです。


中心地に向かうと、開けた広場にひときわ目を引くモニュメントが見えてきます。バロック彫刻の聖三位一体柱はヨーロッパ全土を襲ったペストの終焉を記念して作られたもの。40年近い工期を経て完成した柱の高さは約35mにもおよび、これは10階建てのビルに相当します。精緻な彫刻が惜しげもなく施され、住民の喜びが表れた作品は世界遺産にも登録されています。


真上から眺める、珍しい景色
その聖三位一体柱の隣で、11月下旬からクリスマスマーケットが開催されます。16時を過ぎれば空が既に茜色に染まる時期。イルミネーションで飾られた屋台には雑貨や食べものが並び、訪れた人たちはクリスマスに向けてショッピングを楽しみます。甘いホットワインは身体をあたため、ツリー型の蜜蝋キャンドルはオーナメントにぴったり。生地を棒に巻き付けて焼くトゥルデルニークはチェコの伝統的なお菓子で、砂糖やシナモンをたっぷりとまぶして焼き上げます。パン特有の香ばしさと甘い香りにつられ、学校帰りに子どもたちが集団で詰めかける光景が微笑ましいです。





広場には市庁舎があり、実は塔の上からオロモウツの街並みを見渡すことができます。先ほどまで頭上で輝いていた聖三位一体柱やクリスマスツリーを見下ろすのは新鮮な体験です。広場を囲んでいるパステルカラーの建物が光を浴び、その色が霧に反射することで街全体がカラフルな色に染まっていきます。まるで宝石箱のような幻想的な景色は、寒い冬が用意してくれたご褒美でした。通常は12月24日に終了するクリスマスマーケットですが、プラハでは1月6日まで開催されます。あの賑やかでまばゆいひとときが年明けまで続くだなんて、まさにチェコは夢のような国です。

PROFILE
浅井みら野(あさいみらの)
アメリカの大学で国際関係とジャーナリズムを学び、卒業後は日本の旅行会社で法人営業を担当。その後、旅行関連のカメライターとして、日本全国、世界各国を訪れ、まだ知られていない土地の魅力をご紹介。